有機化学で考えるECRS(イクルス)

業務効率化の有名なフレームワークにECRS(イクルス)というものがあります。
Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrangement(交換)、Simplify(単純化)
の頭文字を省略したもので、この順に効率化の効果が高いと言われています。

自分のやりたいことに使う時間を確保するためにも心に留めておいてほしいです。
この記事では有機化学の視点から解説してみたいと思います。

次のような状況を考えてみましょう。

あなたは今日のうちに反応A, Bと資料作成をしようと考えています。
また、その資料は上司から本日中の提出を求められています。
なお、反応A, Bは反応・後処理・精製からなります。


では、ECRSに則って節約してみましょう

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(仮に1コマ1時間分とします)




1. Eliminate(排除する)
ここでは、不要な業務を削ることを考えます。

まずは実験の目的を考えましょう。
これから仕込むこの実験はまさに今この時間に仕込むべきものですか?
今まさにするべき仕事(優先度S)でなければ遅らせることを考えましょう。

資料作製のために3時間を確保する一番の方法を知っていますか?
それは分液操作を手早くすることでも、中圧カラムを使うことでもありません。
全部で4時間もかかる反応を仕込まないことです。

例えば、評価部門に相談して、反応A工程を1日遅らせてもらいます。
これでめでたし、デスクワークの時間は十分確保できました。

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なにあたり前のこと言ってるんだと思うかもしれませんが、
効率化の一番の基本はこの時点で最も優先度の高い仕事をすることです。



とはいえ、この2反応は本日仕込むべき実験の場合もありますね。
その場合は工程を削減しましょう。例えば精製工程を削減します。
ワンポットにしてしまえば精製に使う時間を資料作製に回せますよね。
(ワンポットにする検討のほうが大変だろというツッコミは、今回は無視します)

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2. Combine(結合する)
複数の業務を同時に実施することを考えます。
例えば反応を1つ1つ仕込むのではなく、同時に仕込みます。
皆さんが普段から行っていることだと思います。

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他にも、オープンカラムをしながら仕込む・分液するなどが多いでしょうか。


これを見て、

「上述の精製工程を削減した時より時間を確保できているじゃないか」

と思う人がいるかもしれません。
たしかにその通りですが、反応を2つ仕込むので9〜12時の密度が上がっています。
密度が上がるということは余裕が減り、安全の軽視など問題につながることがあります。
自分のスキルを客観的にみて、無理のない程度でCombineしましょう。




3. Rearrangement(交換する)
業務の順番を交換し、作業効率化できないかを考えます。

例えば、業務の終盤で行っていた資料作成を、朝一番に持ってきます。
疲れの少ないスッキリとした頭で考えられるので作成時間を少なくできるかもしれません。
(この辺になると単独では効果が薄いので、Combineを組み合わせています)
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他にも、合成の着手時間を天秤やガラス器具の取り合いになる時間帯とずらすことで、
反応の仕込みにかかる時間を減らすことができるかもしれません。




4. Simplify(単純化する)
丁寧にしすぎている作業などを簡素化することを考えます。ただし同じアウトプットが前提です。

例えば、化合物の溶液を移すときに10回も洗い込んだりしませんよね。
通常の溶解性の化合物であれば3、4回で十分です。

ここでの削減効果はあまり大きくなく、よくて1日10〜20分程度でしょう。
それでも長期で考えれば大きな効果を生みますので、コツコツ改善し続けましょう。




最後に

というわけで簡単にイメージを持ってもらうために例を挙げてみました。
皆さんはどのような効率化をしているでしょうか。教えていただけると嬉しいです。

とはいえ、研究はやることを削って効率化すれば結果が出るものでもありません。



効率化はする一方で、遊び心を忘れず一発当ててやるマインドを持って実験していきましょう。

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